「弘前れんが倉庫美術館」で感じたことと考えたこと
2020年9月21日に32年ぶりに訪れた青森県弘前市で、「弘前れんが倉庫美術館」で開催中の『Thank You Memory ―醸造から創造へ―』を見てきました。
青森といえばリンゴが有名ですが、弘前の地に、リンゴを使ったお酒、シードルの醸造所が建造され、醸造所の移転後は倉庫として使われた後、コロナ禍の最中、美術館として蘇り、初夏にオープンしたのでした。
建築家の田根剛氏が「記憶の継承」をコンセプトに設計した「弘前れんが倉庫美術館」は、赤いレンガ造りの建物を生かしながら、屋根をシードル・ゴールドと呼ぶ金色のチタン製にするなど、新しさもあり、広がる芝の緑と背景の空の青に、レンガの赤と屋根のゴールドが映える、その姿を見るだけで、シードルの炭酸のように、シュワシュワと胸の中で何かが弾けて沸き立つようでした。
この、『Thank You Memory ―醸造から創造へ―』と銘打たれた開館記念のプログラムでは、青森県、弘前市に縁のあるアーティストの立体作品などを展示しており、たとえば尹秀珍氏の「ポータブル・シティ」のシリーズ*1や、潘逸舟氏の生活空間を作品化したもの、笹本晃氏による「スピリッツの3乗」と名付けられた、工場/倉庫で使われていた冷蔵庫の扉やダクトなどを組み合わせたオブジェ群、奈良美智氏の犬作品などが、生々しく目の前に迫ってきました。
数日前にアトロク*2の特集「コロナ禍で美術館シーンはどうなってる?」で取り上げられていたことをきっかけに急遽訪問した美術館ですが、とてもよかったです。
建物そのものが歴史的な経緯を色濃く残したものであるのに加え、作品展示も「場所と建物の記憶に焦点を当て」ていたため、市川市でまちづくりに関わっていく上でもとても刺激的な経験でした。
32年前と違い、今は遠く離れていても、思いついたアイデアを即座にスマホを介して伝えることができるわけで、小生は旅先からさっそくフリースタイル市川のメンバーズに、
- 弘前れんが倉庫美術館で建物の歴史を生かした展示を見たこと
- 建物のリノベーションが行われる際に記憶の継承が現在と未来にとっても意義がある
- 空き家が増えている市川市でもリノベーションに際して過去の記憶を生かすことを考えたい
- 地域の人々の【横の繋がり】をつくることと、過去と現在をつなぐ【縦の繋がり】を残し、未来に繋いでいくことを意識したい
という、アイデアとも言えない思いつきレベルのアレやコレやを小さく丸めた球にして、ポンポンと東北地方から千葉県の市川市をめがけて遠投したのでした。
*1:当記事に掲載した写真は、ニューヨークを表現しており、ワールド・トレード・センターのツイン・タワーが存在しています。私も2000年3月に訪問しました。